Nature ハイライト

細胞生物学:エンドソームからの搬出の際に起こるホスホイノシチドの転換反応

Nature 529, 7586

方向性を持ったメンブレントラフィックには、膜に含まれるリン脂質でその膜の特性を決定する役割を持つホスホイノシチド(PI)を、調節しながらPI代謝酵素によって転換していく必要がある。V Hauckeたちは今回、ホスファチジルイノシトール 3-リン酸(PI(3)P)の存在を特徴とするエンドソーム系から、ホスファチジルイノシトール 4-リン酸(PI(4)P)やホスファチジルイノシトール 4,5-ビスリン酸(PI(4,5)P2)が多く存在する分泌性区画や細胞膜へのメンブレントラフィックの際にPIの転換反応が起こる機構を調べた。細胞内の目的地に向かって輸送中のエンドソームの積み荷は、2つの酵素の働きによって輸送方向を変え、細胞表面へと戻せることが分かった。エンドソームの膜にあるPI(3)Pは、まずホスファターゼMTM1(この酵素の機能喪失は、ヒトのX連鎖中心核ミオパチーの原因となる)によって加水分解される。PI(3)Pの加水分解に伴ってホスファチジルイノシトール 4-キナーゼの作用でPI(4)Pが生成し、さらにエクソシスト係留複合体が動員されると、その後の細胞膜との融合が可能になるのである。

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