Nature ハイライト

ナノ科学:個々のナノチューブを通る水流

Nature 537, 7619

カーボンナノチューブは、脱塩などへの応用に関心を集めている。これは、カーボンナノチューブを通って動く水の速度が極めて速いためである。しかし、単一のナノチューブの浸透率の明確な測定が難しかったため、その基礎となる水輸送の機構の特性はこれまで十分に評価されてこなかった。L Bocquetたちは今回、単一のナノチューブから周囲の流体中へ水流が噴出する際の流体ダイナミクスを観察することによって、浸透率を正確に測定できることを示している。この結果から、カーボンナノチューブには半径に依存する大きな表面すべりがあるのに対し、窒化ホウ素ナノチューブには表面すべりがないことが明らかになった。これら2つの系の固液界面に原子スケールの微妙な違いがあることがこうした相違の原因と考えられ、ナノ流体工学が、流体力学の連続的描像が物質の原子的性質と出会う最前線であることを示す例となっている。

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